各ツールの料金・機能・規約は公式サイトの記載を2026年11月3日に確認したものです。当サイトで実際に使った検証はしていません。
この記事は運用ルールを考えるための一般的な整理で、法的な助言ではありません。録音や記録が法律上どう扱われるかは、国・地域、会議の相手、記録の使い方によって変わりえます。判断に迷う場合は、社内の法務担当や弁護士などの専門家に確認してください。
ツール選定より先に決めることがある
AI議事録の導入は、たいてい「どのツールを選ぶか」から始まります。しかし運用で迷いやすいのは、次の3点が決まっていないときです。
- 誰に、いつ、どう伝えて了解を得るか
- 記録をどこまで残し、いつ消すか
- 誰がその記録を読めるか
ツールを入れてから決めようとすると、最初の1件目で判断に迷います。先に決めておけば、あとはツールを差し替えるだけで済みます。
1. 参加者にどう伝えて了解を得るか
録音・記録は、参加者に伝えて了解を得たうえで行う運用を勧めます。 ツールによっては参加者側に表示が出ますが、表示が出ることと、相手が了解したことは別です。
決めておくこと:
- 社内会議: 全社ルールとして周知するか、会議ごとに冒頭で伝えるか
- 社外との会議: 招待の段階で伝えるか、開始時に口頭で確認するか
- 断られたとき: 記録しないで進める、という選択肢を必ず用意しておく
断られる可能性を織り込まずに運用を組むと、その場で判断を迫られます。「断られたら記録しない」を先に決めておけば、現場で迷わずに済みます。
個人情報保護委員会のガイドラインの関係する記載
日本の法律との関係で、公式に確認できた記載を紹介します。ここに書くのは関係する記載の要点だけで、会議の録音がどのような場合に許されるかを一律に示したものではありません。
- 個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年11月3日確認)は、個人情報にあたる例の一つとして「本人の氏名が含まれる等の理由により、特定の個人を識別できる音声録音情報」を挙げています。会議の録音や文字起こしも、内容によっては個人情報にあたる可能性があります。
- 同じガイドラインでは、個人情報取扱事業者が個人情報を取得する場合、あらかじめ利用目的を公表しておくことが望ましく、公表していない場合は取得後速やかに利用目的を本人に通知するか公表しなければならない(法第21条第1項)と説明されています。
会社として会議を記録するなら、「何のために記録し、どう使うか」を決めて、参加者に伝えられる形にしておくのが無難です。具体的にどの手続きが必要かは、会社の状況によって変わるため、社内の担当者や専門家に確認してください。海外の相手との会議では、相手の国・地域のルールが関係することもあります(Otter も公式ヘルプで、地域によっては参加者全員の同意が必要になると説明しています)。
2. 保存範囲と保存期間
文字起こしには、雑談、人事の話、まだ決まっていない検討事項などが、検索できる形で残ります。
決めておくこと:
- どの会議を記録するか(全部ではなく、記録する会議の種類を決める)
- 保存期間(決めていないと事実上の無期限になります)
- 消す手順(誰がどうやって消すのかを決めておく)
「とりあえず全部残す」と、残すほど、漏れたときの影響が大きくなります。記録する会議と保存期間を先に決めておくのが安全です。
3. アクセス権
議事録ツールを入れると、それまで会議に出ていた人しか知らなかった内容を、出ていない人が読めるようになります。これは利点でもあり、リスクでもあります。
決めておくこと:
- 記録は誰が読めるか(参加者のみ / チーム全体 / 全社)
- 検索対象になるか(検索できると、想定外の人が到達します)
- 外部共有の可否
既存のツールの権限設定がそのまま使われる場合、権限が緩いまま導入すると、見えるべきでない情報が要約や検索結果に出てくるおそれがあります。 導入前に権限の棚卸しをしておくと安全です。
ツールごとの、参加者への知らせ方
ツールによって、記録していることが相手に伝わる仕組みが違います。公式の説明(2026年11月3日確認)の要点です。どのツールでも、表示に頼らず、記録する前に自分から伝えてください。
| ツール・使い方 | 参加者への知らせ方(公式の説明) |
|---|---|
| Zoom AI Companion(Zoom の会議でAIの機能をオンにする) | 管理者が「会議でAIをオンにしたときにカスタムメッセージを表示する」設定を有効にできる。同意を求める形にすると、ホスト以外の参加者は通知に同意するまでカメラとマイクが使えない状態で参加し、通知は90秒間表示される(Zoom 公式サポート、2026年9月30日更新の記事) |
| Zoom AI を Google Meet・Microsoft Teams の会議に参加させる | 会議が始まって3分後に、Zoom AI が参加していることと目的を知らせるチャットのメッセージが投稿され、映像の枠にも Zoom のロゴとAIの表示が付く(Zoom 公式サポート) |
| Zoom の My Notes(記録用のボットを参加させない) | ボットが参加しないため、相手の画面には記録していることが出にくい |
| Otter.ai(Otter Notetaker が会議に参加する) | 「[名前]’s Notetaker (Otter.ai)」という名前の参加者として表示され、参加時に会議のチャットへ文字起こしへのリンク付きのメッセージを送る。オンにすれば、会議の5〜10分前に招待客全員へ録音を知らせるメールを送る設定もある。録音を断る人がいる場合は、主催者が Notetaker を参加者から外せば、その後は記録されない(Otter 公式ヘルプ) |
注意したいのは、Otter Notetaker はカレンダーをつなぐと、標準の設定では会議リンクがある予定すべてに自動で参加することです(公式ヘルプ)。社外の会議に意図せず入らないよう、使い始める前に自動参加の設定(「自分が主催の会議」「手動で選んだ会議」など)を確かめてください。録音前のお知らせメールが最初から「オン」かどうかは、確認したヘルプでははっきりしませんでした。
詳しくはZoom AI CompanionレビューとOtter.aiレビューを参照してください。
決まったらツールを選ぶ
ここまで決まってから、ツールの選定に入ります。選定軸は「どの会議形態で使うか」です。
| 状況 | 候補 |
|---|---|
| Zoomをメインで使っていて追加契約を増やしたくない | Zoom AI Companion |
| 商談記録をCRM(Salesforce・HubSpotなど)に残したい | Fireflies.ai |
| Zoom・Google Meet・Teamsの会議を個人で記録したい | Otter.ai |
| 記録より先に、会議の音が聞き取りにくい問題がある | Krisp |
詳しい比較はAI文字起こしツールの比較にまとめています。
精度への期待値を合わせておく
日本語の会議で使うなら、言語の対応状況を先に確かめてください。たとえば Otter は日本語の文字起こしに対応していますが、公式ヘルプでは1回の録音で扱えるのは1つの言語だけとされており、日本語と英語が混ざる会議には向きません。また、話者が重なる、専門用語が多い、回線が不安定といった条件は、どのツールでも文字起こしの誤りにつながりやすい要素です。
導入前に自社の会議を1本通して記録し、「どのくらい直す必要があるか」を関係者で共有しておいてください。期待値がずれていると、運用が続きにくくなります。
よくある質問
Q. 全社ルールとして一度周知すれば、毎回伝えなくてよいですか。 社内会議についてはその運用も考えられますが、社外の相手には都度伝えるのが無難です。相手にとっては初めての話で、社内の周知は届いていないからです。
Q. 記録は残さず要約だけ残すのは有効ですか。 選択肢の一つです。ただし要約は「決まったこと」と「検討中のこと」を混同しやすいため、要約だけを残す場合は人が確認してから保存する運用にしてください。
Q. 相手が録音を断ったら、メモも取れませんか。 相手が断っているのが録音やAIでの記録なのか、記録すること全般なのかを、その場で確かめておくと迷いません。手書きのメモを取る場合も、取ってよいかを一言確認しておくのが丁寧です。
Q. ツールが参加者に通知してくれるなら、自分から伝えなくてよいですか。 伝えてください。通知の出方はツールや設定によって違い、Zoom の My Notes のように相手から分かりにくい使い方もあります。通知が出ることと、相手が了解したことは別です。